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わら人形、わら人形論法、架空の論法ともいう。Aが主張していないことを自分の都合の良いように表現しなおし、さも主張しているかのように取り上げ論破することでAを論破したかのように見せかける。燻製ニシンの虚偽(red herring)。論理性が未熟なため相手の主張を誤解している場合は誤謬であるが、意図的に歪曲している場合は詭弁となる。議論が過熱し論点が見えにくくなると起きやすい。社会生活上よく見られる。
連続性の虚偽 (Continuum fallacy)
A「砂山から砂粒を一つ取り出しても、砂山のままである。さらにもう一粒取り出しても砂山である。したがって砂山からいくら砂粒を取り出しても砂山は砂山である。」
B「建築契約には高額の追加費用の発生のさいには事前に承認を求めよとあるが、10万円は高額ではない。」
術語の曖昧性から生じる砂山のパラドックスを利用した弁証法。ハゲのパラドックス (fallacy of the bald)、あごひげのパラドックス (fallacy of the beard) とも。Aは「砂山」の定義が、Bは「高額」の定義が、その量に関して曖昧であるため詭弁が成立する。閑散とした食堂を「繁盛店」と広告する(何人の客が入っていれば繁盛と呼べるのか不明確)などこの種の弁論は容易であり、社会生活上しばしば見られる。
論点回避 (Begging the question)
「喫煙者はいつでも禁煙できます。彼に必要なのは禁煙する能力なのです。」
推論の前提となる命題の真偽を問わず結論を真とする。あるいは前提に仮定を置いて得られた結論を真とする。上の例では「禁煙する能力」について問うことなく「いつでも禁煙できる(結論)」を主張している。倒置法となっているが、論理構造は「もし禁煙する能力があれば、喫煙者はいつでも禁煙できる」である
論点先取 (petitio principii)
A「Bさんは勤勉な人だから、仕事を怠けるはずがないよ。」
Aの発言は、前提の中に結論を導く事が出来る情報を「あらかじめ」含めている。このように、見掛け上は『論理』の形になっているものの実際は同義反復の推論を論点先取と呼ぶ。同義反復(「XはXである」という演繹)は恒真命題であるが、何かを証明する内容ではない。Aの発言は、「ルノワールは偉大な画家である。何故なら、素晴らしい画家だからだ」と論理構造が等しい(このように発言するだけでは、ルノワールについて何も証明した事にならない)。論点回避の一つ。先決問題要求の虚偽。 論理構造としては、「(勤勉な人はすべて仕事を怠けないと仮定する。Bさんは勤勉な人であると仮定する。すると)Bさんは勤勉な人である。故にBさんは怠けない。」「(素晴らしい画家は偉大な画家であると仮定する。ルノワールは素晴らしい画家であると仮定する。すると)ルノワールは素晴らしい画家である。故に偉大な画家である。」仮定の部分の論点を先取り(回避)した論理構成となっている。
これは「全体がXだから、ある部分もX」という議論で、分割の誤謬と呼ばれる。合成の誤謬とは逆のパターンの詭弁。Aの発言は「Bさんはカレーライスが大好物だ。だからニンジンやジャガイモや米やカレー粉をそのまま与えても喜んで食べるだろう」と論理構造が等しい。
論点のすりかえ (Ignoratio elenchi)
A「スピード違反の罰金を払えというが、世間を見てみろ。犯罪であふれ返っている。君たち警察官は私のような善良な納税者を悩ませるのではなく、犯罪者を追いかけているべきだろう。」
B「トマス・ジェファーソンは、奴隷制度は間違いであり廃止すべきだと主張した。しかしジェファーソン自身が奴隷を所有したことから明らかなように、奴隷制そのものは間違いではなかった。」
論じている内容とはちがう話題(主題)を提示することで論点をそらすもの。論理性が未熟なために陥る場合は誤謬であるが、意識的におこなう場合は詭弁となる。燻製ニシンの虚偽 (red herring) とも。Bの例ではジェファーソン個人の言動の不一致をもって「奴隷制度そのもの」を話題にしており「お前だって論法」(tu quoque) ないしは人身攻撃を利用した論点のすりかえである。