後件肯定の虚偽
A「対象についてよく知らないと人は恐怖を感じる。つまり、
怖がりな奴は無知なんだよ」
Aの発言は、「シャチは哺乳類である。故に哺乳類はシャチである」という推論と同じ論理構造である。 仮に「無知だから怖がる」という前提が真であったとしても、その前提から「怖がりな人は無知である」と結論することは論理的に誤りである。怖がりな人は無知であるかもしれないし、無知ではないかもしれないからである。(
逆は必ずしも真ならず)
誤った二分法
A「君は僕の事を『嫌いではない』と言ったじゃないか。
それなら、好きって事だろう」
B「このまま借金取りに悩まされる人生を送るか、自殺するか、
二つに一つだ」
このBの発言は自己破産という選択肢を除外しているので誤った二分法となる。
未知論証
A「B氏は地底人がいないと断言している。しかし、
そんな証拠はないので地底人はいることになる」
Aの発言は、「XがYでない事は誰にも証明出来ない。
故にXはYである」という形式の推論で、これは未知論証という。「結論できない」という前提から「結論」を推論しているので、前提と結論が矛盾する。これは誤った二分法。科学的に正しくない。
A「B氏はC氏をこの事件の犯人だと推理しているようだが、そんな証拠はない。
C氏はきっと犯人ではない」
法廷においてはB氏に挙証責任があり、B氏が法廷に対しC氏が犯人であると確信するに足る証拠を挙げることができなければ、未知論証であるにもかかわらずAの主張は正しいことになる。
媒概念不周延の虚偽
A「頭の良い人間は皆、読書家だ。そして私もまた、よく本を読む。だから私は頭が良いんだよ」
Aの発言は「XはYである。ZもYである。故にZはXである」という形式の三段論法で、これは論理学で媒概念不周延の虚偽と呼ばれる。
Aの発言は「カラスは生物である。スズメバチも生物である。故にスズメバチはカラスである(あるいはカラスはスズメバチである)」という発言と論理構造が等しい。また、Aの発言について、本を読む人が必ずしも頭がいいとは限らない。(逆は必ずしも真ならず)
媒概念曖昧の虚偽
A「塩は水に溶ける。あなた方は地の塩である。ゆえにあなた方は水に溶ける」
B「非戦闘地域は、戦闘がおきていない。自衛隊の行く場所は、非戦闘地域だ。だから自衛隊の行く場所は、戦闘がおきていない。」
Aの発言は「MはPである。SはMである。故にSはPである」と一見第一格の三段論法に見えるが、文脈によって異なる意味を持つ単語を媒概念に使用しており、「大前提M-Pの文脈におけるM」と「小前提S-Mの文脈におけるM」が異なるため、命題は成立しない